北海道らしいステーキがあってもいいじゃないか

 

 

 

田村 健一(たむら けんいち)

 

北一ミート株式会社 専務取締役

 

1976年札幌生まれ、札幌育ち。

3歳の頃から既に肉屋になると決めていたらしく、肉屋になるつもりで青春時代を過ごす。

高校卒業後、19歳で北一ミート株式会社に入社の肉屋一筋の肉オタク。

持っている資格はお肉博士1級。

現在、北海道の食文化に食肉という分野で貢献中。

http://www.kitaichimeat.com/

 

 

2017年9月、台湾にて日本産の和牛の輸入が解禁になった。

 

日本全国各地の有名和牛は先を争い、台湾市場になだれ込んだ。

どの和牛も、ちょっとグルメな方なら一度は聞いたことがある有名ブランド、しかも日本最高と称される『黒毛和牛A-5ランク』がほとんどだ。

 

しかし、あっという間に飽和状態になる。価格はみなさんご存じの通り、日本国内でもかなり高いものが、輸出するとコストもかさみ、さらに高いものになる。

 

売れ行きは渋いものの、北は北海道、南は鹿児島まで全国津々浦々の霜降りA―5和牛が台湾の高級スーパーに並んでいるのだが、面白みに欠けているような気がする。

脂の風味の違い、くちどけ、キメの細かさ等たしかに違うが、素人が食べて判別できるほど違わない。微妙に違ったからと言って、気になるものでもない。

 

要するに、ほぼ同じものが並んでいるのだ。

 

フランスではシャロレー、バザス、イタリアではキアニナ等々、何種類も牛肉があり、各地におらが村のおらが牛の最高の食べ方や焼き加減がある。だから、行く先々で別の牛肉に出会えて、それぞれに楽しい。

 

しかし、例えば沖縄で金額を気にせずに、旨いおすすめの牛肉を求めると『A-5黒毛和牛』のステーキや焼肉になる。北海道でも『A-5黒毛和牛』のステーキや焼肉だ。

全国のおすすめの牛肉を並べると、どうしてもA-5黒毛和牛に準じたものばかりになる。

赤身の和牛はともかく、ホルスタイン、交雑種が堂々と肩を並べても良いはずだ。

 

日本の牛肉の格付けは、より霜降りが強く、よりキメ細かく、より歩留が良く、より脂が白い牛肉がA-5に近づくわけなのだが、実は「味」という評価項目がない。

 

最近、肉用ホルスタインの肥育農家や肉用交雑種、赤身主体の和牛を作る生産者が減ってきている。

なぜなら、赤身の牛肉を作ることが生産者の生活を豊かにすることに繋がりにくく、同じ時間をかけて1頭を作るなら、より高く売れる格付けの良い牛を作ったほうが良いからだ。

今は空前の赤身ブームなのに、なかなかちぐはぐだ。

 

A―5黒毛和牛はたしかに素晴らしくおいしい牛肉なのだが、これではマグロづくしを頼んで大トロ30貫が来るようなものである。赤身もあるから大トロも旨いのである。

 

 

実は、ホルスタイン等の乳用種は美味しい赤身だったりする。

しかし、謳い難いからか、国産牛という大きなカテゴリーの中でぼやっとした表現で今までブランド化されることが非常に少なかった。特に、堂々とホルスタインと謳っているものは殆どない。

 

北海道は酪農大国という性質上、ホルスタインに牛乳をたくさん出してもらう必要がある。ということは、牛が牛乳を出すためには常に妊娠、出産を繰り返している状態を続ける必要がある。

最近では出産のオス・メスをコントロールできるのだが、ある程度肉用のオスも生産し、上質な赤身の美味しいホルスタインというカテゴリーを定着させることが出来れば、北海道らしい独自の食肉文化を作ることが出来そうだ。

和牛と比べて安価なところもきっとウケる。

 

そして、ホルスタインのような赤身は今流行りのドライエイジングが非常に似合う。うまくいけば、北海道のステーキハウスが他県と違う文化を発信できるかも知れない。

そう思って、ホルスタインのドライエイジング実験中。面白いものができそうだ。

 

「今日は北海道の赤身のホルスタインステーキが食べたい!」と、全国の人に時々思ってもらえるほど認知度が上がったら、北海道の肉屋として嬉しい。

 

 

 

( 絵 / Midori Kambara )

 

 

 

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