我々道民は近年、大きな課題に直面している。

 

『道外の知人が「美味しいスープカレーが食べたい」と言い出した際にどうアテンドするか』、問題だ。

 

シンプルなようでいてその実、闇は深い。

 

アテンド無しの初心者が、適当に入った店で、複雑なオーダー方法に戸惑った果に仕上がる無難な一皿。

 

そしてその1食のみの中途半端な体験をもって「普通に美味しかったけど・・」「スープカレーとはこんなものか・・」と誤認したまま帰国してしまう悲劇が多数報告されているのだ。

 

かくの如き禍殃(かおう)をこれ以上増やさない為にも、適切なアテンドはもはや道民の責務であると言える。

 

アテンドにおける留意点は、基本的事項だけでも下記に及ぶ。

 

①店選び
②ベースのスープタイプ
③適切な辛さ
④メイン具材
⑤トッピング
⑥サイドメニュー

 

①は言わずもがなとして、最初の大きな関門は②だ。多い店では3種類以上の選択肢があり、ここで未来が大きく左右される。事前リサーチと体調や気候も考慮に入れた上での熟考を要する。

 

そして初心者が一番陥りがちな罠、それは③の選択で無難な「中辛」としてしまう事。ただ辛味成分だけが増強する店も確かに存在する。しかし多くの場合、辛さに比例して旨味やコクも加わってくる。熱いうちは辛さが際立つが、温度低下に従い甘みが感じられてくる現象も計算に入れなければならない。よって、「各自の限界から1~2段階上の辛さとすべし」というのが有識者の見解として概ねコンセンサスを得ている。

 

しかしそのような辛味負荷をかけた後、排泄時にスパイス性肛門刺激(spice induced anus stimulation: SIAS)が高確率で生じる。SIASとそれに起因して頻回にトイレに篭る状態を合わせて、業界では「万博が開催される」というが、この万博リスクに関する事前説明と同意形成が望ましい。

 

④も重要だ。チキンが基本とされているが、シーフードなど他のメイン具材とすることでスープの味にも変化が生じる。②と④の組み合わせにはセンスと、畢竟(ひっきょう)、生き様そのものが映し出される。

 

⑤・⑥は枝葉の問題と思われがちである。しかしここでこれまで積み重ねてきた全てが灰燼(かいじん)に帰す危険性を孕んでおり、上級者の指導下に慎重な判断を要する。各店に対する造詣がまだ浅いうちは道民といえども安易に手を出すべきではなく、せいぜいチーズや、食前後のラッシー程度に留めておく事が望ましい。

 

そしてただ「美味しかった」体験では済まさせず、「ハマッて」帰って欲しいという社会的要請から開発されたプログラムがSOUPCURRY BOOT CAMP(SBC)だ。

 

最低5日間連続で昼・夜2食ずつ。店はある程度重複しても構わない。辛さは序盤で限界を探り、徐々に上げていく。 

 

後半「もうスープカレーなんて見たくもない」という状態まで追い込こまれ、自己との対話が惹起(じゃっき)される。所謂「スープカレーハイ」の状態だ。


個人差はあるが「スープカレーの向こう側」と呼ばれる世界を垣間見る者もいる。アスリートの世界ではゾーンなどとも呼ばれるが、この境地に至ると店員の動きが止まって見えるらしい。

 

そして後の回復期を経て、身体がスープカレーを自然と欲するようになれば一人前の隊員の完成だ。

 

筆者の元には過去に7人が入隊し、途中脱落者は1名のみ。帰国後一時的に禁断症状に苦しむことにはなるが、みな立派に人生の泥中に学び、それぞれ美しい花を咲かせている。

 

偉大な先人たちの不断の努力により、スープカレー文化は全国に漸次展開しつつある。

 

望蜀の嘆(ぼうしょくのたん)かもしれない、しかしそれでも可及的遍(あまね)く人類にこの迷宮的とでも言うべき奥深い魅力が伝わることを心から願ってやまない。

 

 

 

( 絵 / MIdori Kambara )

 

 

 

 

 

塩谷隆太(しおや りゅうた)


krugist/athlete/M.D./Ph.D. 

 

1979年 秋田市生まれ 
駿台市ヶ谷校・中山寮出身 
幼少時に2年間シカゴで生活(英検5級) 
籠球を嗜み、能代工業時代の田臥選手にファールをしたことが有る。
Remnant(株)CIO、 Le Cercle(株)evangelist、サッポロクラシックビールCM出演、 fastdoctor(株)顧問 、一心会 経営企画部 、A-bank(社)代表補佐など様々な顔を持つが、その実態はただの酒好き。ヴィンテージ眼鏡マニア。好きな素材はヴェンタイル。スレンダーな知的美女が苦手。
変態鮨で名高い「鮨ノ蔵」(2日間)やナマズ専門店「phish apartment」(3日間)など数々の名店で厳しい修行を積み、料理の腕はアマチュア級。得意料理はファイナルカレーとポルトガル料理。

 

 

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