北海道の道が好き。

道はどこにでもあるし、あるのが当たり前すぎて、わざわざ考えることなんて少しもなかったけれど、今は“道”というものの存在を感じ、“道”を見て感動する。

泣くわけじゃなくて、いろいろと感じる。心が動く。

 

ある時、私は道の周りに存在する“必要不可欠なものたち”が好きなことに気づきました。

例えば、矢羽根(やばね=固定式視線誘導柱/豪雪地帯などで道路の境界を示す標識)や覆道(ふくどう/落石などから道路を守る、トンネルに似た防護用建造物)などが、そう。

 

こういったものが、胸躍るほど好き。

 

なんの面白みもなく、飾り気もなく、不愛想なデザイン。必要だから作られたのに、時に「いらない」と邪魔にされることも。

でも、美しい風景を見つける度に「誰かと共有したい」、「また見たい」、「いや、ほんとは誰にも教えたくない」って思うのと同じく、道路に設置されたものたちを見ると、「おおお!!!!」と心揺さぶられ、そこからいろんな感情をもらっていることに気づいたのです。

 

想像してみてください。

緑高く生い茂る静かな森に、細く長い道が一本通り、永遠の吹き抜けのような青い空間。その道の両端に、支柱から吊るされ、規則正しく並ぶ無機質な矢印の連なり。

これが矢羽根です。

 

時に自然景観を邪魔していると思う場合もあるけれど、その連続している矢印の並びが面白く、美しく、すんごく心地いい。機能性からくる美しさなのかしら。

 

車を降りて、パシャリ。

「うーん いい!」

 

自分の真上にある矢印は、太陽の光を背にシルエットだけが空にぽかんと浮かび、圧倒的な存在感があって、かっこいい。

ふと足元をみると、道の上にでっかいグレーの矢印が私を指している。なんか嬉しい。

矢羽根だけで、ずっと楽しめます。ずっと続くから、キリがありません。

 

冬には、道が消えます。ミラクルマジックです。道、消えるんです。

ブヒョぉぉぉーーーーーっという音を轟かせる吹雪で前が全く見えなくなったり、逆に天気が良すぎて視界が真っ白にブッ飛んで、道と雪山との境目が全くわからなくなるのです。

そんな時に大活躍するのが、矢羽根。その効果は絶大です。

 

なんたってほんとはそのためにあるのだから、自発光してチカチカ光る矢羽根の灯りが、道案内をしてくれます。

夢を見ているかのような白だけの世界を、灯りだけを頼りに進む怖さとドキドキ感。だから、矢羽根はむちゃくちゃ有難いもので、むちゃくちゃ美しいのです。

 

覆道も素敵です。

半分だけ山にくっつき、半分は柱でできています。風景は柱のスリット越しにチラチラ見えます。

 

そこには木漏れ日とは違って、同じ形をした人工的な光の美しさと、風景が揺らいで見える柔らかな自然があり、目の前に広がる道に感謝し、唸ります。あまりの美しさに、ため息がこぼれます。

 

少し遠目に見ると、覆道の屋根は緑の蔓や木々で覆われ、山と一体化しています。なんということでしょう。かっこよすぎて、驚きを隠せません。

 

北海道の魅力は、「自然は自然のままでいい」と思わせてくれること。

これに尽きると思っていたけれど、それだけじゃなくて、人の手が加わってこそ、自然そのものに面白みや温かさがプラスされる。どこにでもありそうな風景にも、道にも、「味がでるんだよ」と、教えてくれているように思います。

 

どんなものも、どんなことも、見方を変えれば、新しい発見になり、永遠に楽しめる何かがある。

そんなワクワク感を抱かせてくれる風景を持つのが、北海道。その風景を作っている要素の一つが、“道”だと思うのです。

 

ただ道を通るだけで、こんなに沢山の発見があるのだから、片道300kmの運転だって、楽しい旅~るるるん♪です。

 

道ってすごいよね。ただそこにあるだけなのに。

 

 

 

( 絵 / Midori Kambara )

 

 

 

 

 

冨田真未(とみた まみ)

 

シーニックバイウェイ ルートコーディネーター /(一社)北海道開発技術センター 主任研究員

 

1976年札幌生まれ。北海道のより道ドライブ情報誌「Scenic Byway」を担当(年2回発行)。きっと簡単にできるであろうことを無駄にハリきり、ぐったり疲れ、食べる量も多くて燃費が悪い。今日も山を登り下り、そんで次はどこいいこうかなと考える帰り道が、何より楽しい。趣味は山、旅、いたずら描き。好きな場所は、雪の中、水と光と影のある空間。一つでも多くのまだ見ぬ地へいき、自分の足で歩き、自分の目で見たことを、自分なりに表現できたら素敵だなと思う。

http://www.scenicbyway.jp/

 

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