「飛行機の小さな窓からのぞいた北海道の大地には

うっすらと、真っ白い雪が積もっていた。

 

大人になってからの数年間、北海道を離れて過ごしていたことがある。

多分な順応性により、どこの街にでも不自由なく暮らすことができた。

「水が合う」というよりは「どんな水でも飲める」というか。

 

ただ一つ、どうしても受け入れがたいことがあった。

それは、「冬に雪が積もらない」ということである。

クリスマスにもお正月にも雪が無い。

イルミネーションの灯りはキラキラ輝くけれど、道路は無表情にアスファルトをむき出しにして、葉の落ちた街路樹は寒そうに冷たい風を受けている。その味気ない冬だけにはどうしても馴染めなかった。

私の知ってる冬とは違うんだもの。

 

雪国の子供なら誰でも一度は「雪だるま、どこまで大きく出来るか」やったことあるのではないか。

学校から家までの道のりを雪玉を転がしながらどんどんと大きくしていくのだ。で、途中大きくなりすぎた雪玉はどうやっても動かなくなり、他人様の家の軒先にこっそりと置き去りにして帰る。もちろん次の日はその家の前は迂回して通らない。

また、「誰が一番長いツララを手に入れられるか」はどうだろう。

他人様の家の屋根から大きくぶら下がる魔法の杖みたいなツララを手に入れようと、雪の塊を投げつけ、勢い余って屋根の雪ごと落ちてきたなんてことも。

安いナイロン製のボッコ手袋(親指だけ離れてるやつね)は浸みて指が冷たくなるけど、子供達は気にしないほど勇敢に雪と遊んでいた。

 

大人にだって、楽しいことはある。

しんしんと雪の降り続いた夜、次の朝カーテンを開けると、家の前の木々には雪がこんもりと積もり、それはまるで子供の頃に読んだ「クリスマス」の絵本のよう!あまりの美しさに心が揺れる。

雪は雨と違って、よほどの風がないと降っていても音がしない。

でも、私たち北の住人にはわかる。

「今、雪が降っている。」と。

しーん、とするのだ。

空気の中に含まれるさわさわした「音」みたいなものが結晶化するのではないだろうか。

テレビを見ていても、本を読んでいても、頭の後ろの方では、その無音の降雪をずっと感じている。

そんな中で飲むお酒、美味しいと思いません?

 

そう、だから帰省する飛行機から見える雪に、帰ってきたのだとホッとした。

これこれ、冬はこうでなくちゃ。

新千歳空港からはJRへの直結があり、一度も外に出ずに札幌駅まで向かうことができる。そこから地下鉄に乗り換え、実家の近くの駅へ。

ここで、ようやく地上に出る。

 

「あ、雪。」

 

なんてもんじゃない吹きすさぶ雪嵐。

横殴りの風に髪の毛は連獅子のように舞い上がる。

バスは行ってしまったばかり、タクシー乗り場には一台も見当たらない。

疲れが増して、泣きたいような気持ちになる。

「あー、もう雪なんていらない!」

 

だけど、やっぱり思ってしまうのだ。

冬には雪が必要。

荒々しすぎる歓迎にはうんざりするけれど、

暖かな家には冷たーいビールが待っているのだから。

 

 

 

( 絵 / Midori Kambara )

 

 

 

 

樋田希子(ひだ のりこ)

 

イタリア料理 IL NIDO DELPASTO(イルニードデルパスト)

オーナー ソムリエール

 

札幌市出身。

藤女子短期大学国文科卒業

事務系OLとして札幌や東京にて13年間働く。

心機一転、札幌の調理師学校に通い、調理師免許取得の後、市内の飲食店に勤務、三ヶ月のイタリア留学。

2016年3月念願のお店を持つ。

http://blog.livedoor.jp/ilnidodelpasto/

https://www.facebook.com/IL-NIDO-DEL-PASTO-1666262486958960/

 

Share on Facebook
Share on Twitter
Please reload

EZOBITO TM 2017 All Rights Reserved. 

This website is supported by HOKKAIDO-OMIYAGE-TANKENTAI

http://www.rakuten.co.jp/hokkaido-omiyage/

​サイト内のすべてのイラストおよび文章の無断転用を禁止ず