北海道産ワインの可能性とこれから

 

2018年は、政府が蝦夷地の名称を北海道と定めた1869年からちょうど150年。今年(2017年)は、北海道で本格的なワイン醸造を開始した年から54年。道内には33カ所の醸造所が開設され、醸造用ぶどうの栽培面積は全国一の広さから、国内有数のワイン産地となりつつある。

 

国内初の自治体ワイナリーとして1963年に誕生した池田町ブドウ・ブドウ酒研究所は、北海道でのワインづくりにおけるパイオニア的な存在。「十勝ワイン」としてのブランドを確立してきた中、ここからの50年はぶどうづくりへの原点回帰の時期ととらえ、独自の改良品種「清見(キヨミ)」同様、十勝の気候風土に適した独自品種をぶどうからつくることに力を入れている。

 

北海道では、冷涼な気候のもと寒冷地に適したドイツ系の品種が多く栽培されてきたが、近年は気候変化の影響も重なり、ピノ・ノワールやシャルドネなどフランス系品種による栽培面積が増加傾向にある。フランスの老舗ワイナリー「ドメーヌ・ド・モンティーユ社」が、函館市内でのワイナリー開設に向けて、来年度からぶどう栽培に着手するという動きも重なる。

 

ここ数年で積算温度(*注1)がブルゴーニュに近づいている空知地方や余市町、北斗市などでは、糖度が高く実が引き締まった良質なブドウが栽培され、美味しいぶどうであるからこその質の高いワインづくりが実践されている。

 

各地域でワイナリー建設計画の動きが活発となる中、最近では、道産ワインを取扱う飲食店が増えていることも、品質に対する評価の高まりと言える。

 

北海道でのワインづくりを牽引してきた「十勝ワイン」や小樽の「北海道ワイン」、「ふらのワイン」、「はこだてワイン」は老舗ワイナリーとして、銘柄のリニューアルや限定醸造を商品化するなど、日本ワインとしての質の向上を目指す。

2000年以降に開設してきた家族型経営のワイナリーは、地域に根差す、地元のワイナリーとして農業の新しい価値観を見出し始めている。

 

例えば、今、最も注目するのは函館市のシティワイナリー「農楽蔵(のらくら)」。北海道シャルドネを追求し続けるのは佐々木賢さん。奥様の佳津子さんと二人三脚で北斗市にある自社農園でブドウを栽培。8割がシャルドネ、2割がピノ・ノワールほか。2012年に函館市の中心地に自身の醸造所を開設した。 

 

「グラス1杯で満足するのではなく、気づいたら1本飲んでいた」。

 

ワインをつくるときにそのようなシーンを思い描きながら、亜硫酸を加えない、身体や食べ合わせの食材に馴染むワイン、そして地元に根付く、函館、北斗のテロワールを醸すワインづくりに取り組む。

 

自宅で北海道のワインを飲む機会が多い私にとって、確かに気づいたら1本飲んでいることがある。その多くは自然派スタイルの醸造による身体に負荷を感じない銘柄。海外のワインを1本飲むことはほとんど無くなった。(年齢のせいかしら・・・

 

ワインのつくり手たちと交流をする中で、実際にワイナリーへ足を運ぶからこそ分かることがある。 

それは、北海道にもドメーヌ(*注2)的なワイナリーが増えたということ。背景には、無理せずじっくりと、納得のゆくライフワークをベースにしながらブドウやワインに向き合うそれぞれのストーリーが見え隠れし、発見するたびに何とも言えないトキメキを感じる。

 

最近では、ワイナリーで買ったワインを自宅に持ち帰り、品種の特性やつくり手の個性にどのメニューが合うかを考えながら食べ合わせを楽しむペアリングの時間が増えている。(その分、外食はめっきり減ったような・・・

 

北海道のワインが地域文化として定着するということは、まさにワインを愛する人たちが自宅で気軽に、それぞれのペアリングを楽しむ時間がもっともっと増えてゆくことなのではないだろうか。

そのような思いを巡らせながら、今日もまた、道産ワインとおつまみとの食べ合わせを自宅で気ままに嗜んでみることとする。あ~至福のひととき。

 

北海道の和飲(わいん)に、乾杯☆

 

 

*編集部注1)積算温度(せきさんおんど)=ある期間の日平均気温が基準温度を超えた分だけ取り出し合計したもの

*編集部注2)ドメーヌ(Domaine)=自ら畑を所有し、栽培から醸造、瓶詰めまでを一貫して行う生産者

 

 

( 絵 / Midori Kambara )

 

 

 

阿部さおり(あべ さおり)

 

(有)インターリンクジャパン 代表取締役

『北海道のワインを旅する』著者(北海道新聞社刊)

 

北海道室蘭市出身 國學院大學文学部文学科卒業

プランナーとして北海道の「ワイン」「食」「観光」をテーマにしたイベントプロデュースやワインと食品を組み合わせたオリジナルギフトの商品企画、北海道産品の商品開発を行う。2017年10月より北星学園大学オープンユニバーシティでの講師を担当。クロスホテル札幌で2008年から毎月開催されている道産ワインイベント「和飲(わいん)な人時間(ひととき)」企画プロデューサー。

InterlinkJapan URL

http://www.interlinkjapan.net/

 

道新ブログ「Luxuryに乾杯!」連載中

http://blog.hokkaido-np.co.jp/saorin_abeko/

 

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