知る人がひとりもいない北海道に夫婦ふたりで移住して来て、すでに二十年以上が経過している。道東の弟子屈町に家を作ったのは十五年前。その時から弟子屈と札幌の二地域居住を続けている。毎週北海道を東西に横断する日々だ。

 

この二地域居住、仕事の関係などもあり仕方なく続けているのだけれど、実はいい面もある。僕たちのメインである弟子屈の暮らしは、自然のご機嫌に激しく左右される、非常に不便なもの。いい言葉で置き換えれば「手応えのある暮らし」。僕たち夫婦はそれを求めて移住してきた。一方、札幌の暮らしは都会が非常にコンパクトにまとまった便利なもので、豪雪地帯であることが信じられないほど。弟子屈の「手応えのある暮らし」で疲れると、札幌という手頃な都会で心身を癒やす。バランス感覚ってやつだ。普通は逆じゃないかと言われそうだが、僕たち夫婦にとってはそうなのだ。

 

しかし、そんなバランスのとれた暮らしも徐々に慣れてくる。すると日々自然と格闘する「手応えのある暮らし」も単なる「大変な暮らし」と感じることが多くなる。二地域居住全体としてマンネリなのだ。そんな気分の裏返しで、僕は京都に惹かれるものを感じ、頻繁に通うようになった。京都は長い歴史の中で、日本の自然を人の暮らしに上手く溶け込ませてきた土地である。つまり北海道での「手応えのある暮らし」と京都は表裏の関係にある。京都への興味関心も、僕の「手応えのある暮らし」とのバランス感覚なのだ。

 

北海道での日々に僕の体が無反応になってくると、たまらなく京都に行きたくなる。京都に行って満足して帰ってくると、日常の「手応えのある暮らし」の意味が思い出されてくる。まさに「センス・オブ・ワンダー」を取り戻す感じ。まだ京都に居を構えているわけではないが、僕にとってこの現状は、弟子屈・札幌・京都の三地域居住でバランスをとっていることに他ならない。

 

昨年付き合いの長いデザイナーとふたりで、北海道と京都をテーマにしたリトルプレス「北海道と京都と その界隈」(https://www.facebook.com/sonokaiwai/) を発刊した。単に京都好きのデザイナーと編集者がそこにいたからできあがったものである。付け加えるなら暇だったから。そんな不埒なきっかけで始まったリトルプレスなのだけれど、僕の三地域居住の日々がぴったりフィットする。お金さえ回ればライフワークになる。まさに、河井寬次郎の名言「暮しが仕事 仕事が暮し」が実現するのである。

 

 

 

(イラスト /  Midori Kambara )

 

 

 

 

 

 

森末 忍(もりすえ しのぶ)

プランナー・編集者

 

大阪出身。大学から東京へ。大学卒業後出版・広告業界で約10年。1996年に北海道へ移住。道東の弟子屈町に家を建て、札幌との二地域居住を実践中。リトルプレス「北海道と京都と その界隈」を発行する他、自宅をギャラリーなどの多目的空間として運営している。

 

 

Share on Facebook
Share on Twitter
Please reload

EZOBITO TM 2017 All Rights Reserved. 

This website is supported by HOKKAIDO-OMIYAGE-TANKENTAI

http://www.rakuten.co.jp/hokkaido-omiyage/

​サイト内のすべてのイラストおよび文章の無断転用を禁止ず