北海道で生まれ育った私は、北海道の外で暮らしたことはない。

 

夏の季節にはどうしても身体が衰弱する。北海道でそうなのだから、他の地で過ごす夏の私は溶けてなくなってしまうでしょう。 幼い頃から身体の弱い私は気がつくと、ひとり絵を描くことが好きな少女になっていた。

 

そして雪の降る季節がやってくると、夏とは違って元気なわたし。雪の結晶を描けるようになりたいと思った。寒いけれど冬の澄んだ空気を吸いこむと、身体が凛とし、私が私でいられるようにしてくれる感覚。白く覆われた風景は全てをリセットして、私を新たな再生の世界へと導いてくれる様だった。

 

先祖は九州。開拓民として蝦夷地へやってきたという。夏に弱い私の身体に佐賀の血が流れていることを想像するのは難しい。それよりも、この極寒の蝦夷で生きつづけた先祖の証しとして、今は私がここで生きている。なんて不思議なのでしょう。先祖たちはどのようにして工夫をし、厳しい自然と共に生きてきたのかと、想像をめぐらす。

 

生まれたときから側にある風景。

 

四季とともに眺め、触れて、記憶のなかに鮮明に残る欠片。どこまでもつづく草原。朝露をまとう野の花。光を放つ氷の柱。それらに魅了されて、どんなに描いても飽きることはなく、そうして大人になった。見えない風が吹くたびに、「あなたたちは私の先祖のことを知っているのよね」と呟いた。

 

私はどうして絵を描くのか。近年、ようやく自分の名前の意味とともに読み解くことができたように思う。先祖からのメッセージかもしれない。蝦夷の自然に見守られ、必要なことを教えられ、今を生きていると感じる。

そのことに感謝をし、私の見た自然の姿を描き、絵で記録をしている。

 

 

未来の蝦夷人に懐かしい風景を残していくことができたら。そう思う。

 

 

 

(イラスト / Midori Kambara )

 

 

 

 

蒲原みどり(かんばら みどり)

 

画家

 

北海道生まれ。

自然の風景を過去の記憶と重ねて描いた絵画作品を制作。

本の装丁、挿絵、着物の絵柄を手掛ける他、指輪、耳飾りなどプロダクトのデザインも行う。 

www.midorikambara.com

 

 

 

 

 

 

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