

大澄かほる(おおすみ かほる)
料理研究家・ハーブインストラクター
札幌市在住。
短大卒業後一般企業に勤務し、後に大手料理教室に転職。
2010年にハーブと野菜の料理教室を開業。
また、飲食店等の支援業務や講演、フード企画等を手掛けながら食の大切さの伝搬と地元北海道への恩返しを目標に道内を奔走中。
北海道を象徴するハーブは何ですか? と聞かれることがたまに有りますが、オホーツクの風に吹かれて香るミントや、富良野を彩る青紫のラベンダーを思い出す方は多いと思いますが、「ナギナタコウジュ」(アイヌ語で「エント」/ シソ科の一年草 / 乾燥させた葉や花穂を煮出しお茶にする)という植物を思いだす方は少ないのではないでしょうか?
私がナギナタコウジュに出会ったのは、薬用植物の専門書の中でした。
独特の臭気という表現とアイヌ民族が使っていたという点に興味を惹かれ、種を取り寄せ実際に育ててみたほか、収穫して乾燥させ、お茶を飲んでみたことを思い出します。
今ではハーブティの一素材として、日常的に使っていますが、味や風味はほうじ茶や紅茶に近いと言うと分かり易いかもしれません。

あたためると特有の臭いは殆ど飛んで気にならず、逆にジャスミンの様な甘い香りと、コリアンダーやほうじ茶のスパイシーな芳香を感じ、それらが調和しています。
身も心も芯から温める様なその香りは、アイヌの方たちが邪気払いや風邪に効く植物として大事にし、お茶以外にもお粥の風味づけに使い、太い茎も調理道具として捨てずに利用していたのも納得ができます。
まさに歴史から見ても、ナギナタコウジュは北海道を象徴する植物のひとつと言えるのではないでしょうか。
ちなみに、他にも野原にたたずむ「雑草」の中に北海道らしいハーブはたくさん隠れています。
バラの一種の「ハマナス」も花弁に華やかな芳香があり、こちらもアイヌの人々がお茶に使い、果実は現在「ローズヒップ」としても使用されている植物です。
道産子でもハマナスがハーブの一つだと知って驚く方がいて、有用性の高いハーブであることを伝え続けたい存在です。
自然に近い北海道は、どの街に住んでも少し行けば野原や海、山にそして多様な植物たちに簡単に出会えます。
そうした中に、たくさんの個性を持つ地域ならではのボタニカルたちが存在し、観光であっても、ふと道端に止まってそれらを観察するのも、私のお勧めの時間の過ごし方の一つです。
( 絵 / Midori Kambara )