

長井 恒輔(ながい こうすけ)
おずグループ オーナーシェフ / 北海道フードマイスター
2000年 和食の道を志す。
2004年、2005年と2年連続で日本料理のコンクールで優秀賞を受賞。
2007年 日本料理人が創るオリジナル燻製料理店『おずsmoked和taste』を立ち上げる。
2014年 燻製肉専門店『OZバル』を立ち上げる。
北海道ならではの燻製という新しい食の可能性を日々研究している。
生まれも育ちも北海道の私はある意味、井の中の蛙でもあるが、北海道は言うまでもなく、美味しい食材が豊富な宝庫である。
海、山、川、畑、の大自然から生まれる、農業、酪農、漁業の資源は有限なのだろうが、無限のポテンシャルを感じずにはいられない。
そんな、北海道の“食”に携わるものとして、日々お客様と対峙する機会も多い中、危機を感じていることがある。
お客様から聞くことが多い言葉に「北海道って食材は美味しいけど、美味しい料理店が少ないよね」というものがある。
この言葉に対して、料理人でもある私は一言で「食材が良いのだから、その食材を活かすためにあまり手をかけないほうが良いんだよ」と言えないのだ。
とある北海道旅行にまつわるデータで、北海道旅行に行ったことがある回数についてまとめたものがある。
道外からの国内観光客の45%が来道経験5回以上のハードリピーターである。なんと2~4回までを含めると82%にも達する。海外観光客で2~5回以上となると30%以上。
そして、その中でも「また北海道に行きたい」と考えている方は90%以上という驚異的な数字。
また、一回の北海道旅行における宿泊日数は、道外からは1泊2日9.6%、2泊3日34%、3泊4日15.3%、4泊5日61.9%、5泊以上16.7%。
海外からは、当然ながら更にロングステイ傾向にあるという。
一方、こんなデータもみたことがある。
北海道旅行における目的と満足度について、目的が【特産物の飲食・買い物が3位】にもかかわらず、満足度調査では、食事部門が期待値よりも満足度が下回っているというのだ。
こんなところから、食材の良さが強いが故、寿司や刺身、炉端焼きなどの素材を活かす料理は勿論のこと、ラーメン、ジンギスカン、スープカレー、豚丼など、北海道ご当地グルメのマンネリ化がその課題ではないかと感じている(私も含めて道民が愛してやまないのは間違いないのだが)。
そこで、料理人として提案してみたい。
北海道内各地域のポテンシャルの高い食材を、ある統一された手法を用いてご当地グルメを作り上げる。
「燻製」である。
日本では、伝統的な燻製である高知県の「鰹節」や、秋田の「いぶりがっこ」、そして道民にも知られていないアイヌの方が作っていた北海道の「サチェップ(鮭の燻製)」がある。
世界各国、様々なところでやられているスモークに、北海道ならではの燻す定義を作り、ご当地食材を活かした燻製を作る。
例えば、世界的にはスモークの燻し材(木)にヤ二分が強い針葉樹は適さないと言われている。しかし、土地柄ドイツのフランクフルトやソーセージは針葉樹で燻す。その後スチームやボイルが工程にあるからである。
中国料理ではお茶葉を用いる。
燻製とは、生の木を燃やすことにより得られた煙で独特の風味を付けた調理法。
美味しけりゃ小麦のもみ殻でやろうが、そば殻でやろうがなんとでもできる(燻し方がわかっていれば、まあまあ美味しく作れる)。
名前も、もはや「なになにの燻製」でもない。

職業柄、「私、燻製苦手なんです」という言葉も年間300回ほど聞く(多分そのくらい笑)。
でも、意外にもその方に「ソーセージやベーコンお好きですか?」、「お味噌汁やお吸い物美味しいですよね?」と聞くと、ほぼ皆さんが好んで口にしていることが多いのが実状である。
珍味や乾物のイメージが強い、燻製に対して「なになにの燻製」というのは、不要である。
昨今の保存設備技術、物流の向上により、もはや燻製は保存製品である必要はない。
ご当地の食材のジューシーなところ、美味しいところを活かす“焼く”、“煮る”、“揚げる”、“茹でる”と同じように、ひとつの調理法で良い。
以前、燻製にすると、栄養素が上がったり、ダイエット効果が得られる、抗菌作用があるなどエビデンスを求めたこともある(抗菌作用はありそうだけど)。
しかしながら、他の調理方法に健康やダイエットに対するエビデンスなどない。
その食材に対して美味しくなるからその調理法を選ぶ!
これに尽きるのだ(私自身は燻製に対するメリットとデメリットのエビデンスはこれからも追いかけますけど)。
11年間、北海道新聞の燻製講師として、家庭で簡単燻製講座というものをやっていると、もはやアウトドアでやるのではなく、家庭で日曜大工ならぬ日曜燻製という言葉まで定着しそうな気がする。
趣味で燻製を作り続けて、ブログを書き、しまいには本まで出版し、私より稼いでいるであろう方まで出てくる始末(笑)。
北海道は、木々も多くログハウスで建てられた温もりのあるコテージやペンションまで点在し、海でも山でもBBQをする文化もある。
世界から、食材だけではなく四季を活かし、自然が豊かというイメージを味方につけ、今こそオール北海道で、下味の付け方や燻し材も、燻製にした後の調理法すらも考え、新たな食文化を築くときではないかと思っている。
スープカレーの文化を根付かせたスパイス協会のように、北海道燻製協会を立ち上げないと実現は難しいであろう。
しかし、新たな食文化として北海道が煙の街になる時、さらに来道者が増えるきっかけになり、我々飲食業に携わる人たちの労働環境や社会的地位に少しでも影響を与えられればと夢を抱く。
そして、この壮大なミッションこそ、今の飲食業に必要なモチベーションだと感じる。
いつか日本の子供たちがフランスのように「うちの父ちゃん料理人なんだぜ!」と誇れる時代を北海道から発信できることを信じて、今日もすすきのを少しだけ煙たくする。
( 絵 / Midori Kambara )
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