春の苦味を待つ



内山裕史(うちやま ひろし)

うちやま農園 三代目農園主

美唄市出身。内山家がアスパラを植えた翌年の1976年に生まれ、手伝いも嫌いな農業をやりたくなくてサラリーマンになるも、自営業に憧れて実家に戻る。両親、愛妻、愛娘と愛息子、パートさん20人と働く。人に恵まれる運を武器に、アスパラだけで食える農家になりたい。 ブログ「アスパラガスをつくって、人に貢献する」http://hiroshicommit.blogspot.jp/ Web「アスパラガスのうちやま農園」https://www.uchiyamanouen.com/




春は自然と心が躍ります。

半年間、大地を覆っていた雪がなくなり、人間も植物も寒さから解放され、新緑の季節に向かいます。

あの辛かったマイナス20度の朝とか、ホワイトアウトする猛吹雪とか、もうすぐに忘れてしまいます。

アスパラ農家に後継者として戻ってきて10年が経ちました。サラリーマンの時には遊びを通して感じていた四季を、今では仕事でいやがおうにも感じており、その対応に追われる毎日です。

それが辛いことかと聞かれれば、実はそうでもないのです。 植物や土の状態に合わせて作業することは、ある条件を加えてから楽しくなりました。 それは「自然とは戦わない」ということと、「健康第一」。 太陽や雨や風という恩恵と戦ってはいけないし、自分の身体を一番大事にすることが継続するコツなのだと思います。

「春苦味、夏は酢の物、秋辛味、冬は油と合点して食え」。 昔からそう聞きます。季節に合ったものを体が欲しますし、その季節を乗り切るために摂取した方が良いという栄養素が含まれているのだと思います。

流通が発達し、農業技術が進んだこともあり、最近では野菜の旬がわからなくなるくらい、年中色々な野菜が食べられるようになりました。そんな中、旬に合わせて食事を楽しむことは、贅沢のひとつではないかと思います。

“春苦味”の代表格が山菜。 たらの芽、フキノトウ、三つ葉など、苦味の一言で片付けるのがもったいないような、独特の風味とエグ味をもった美味しさがたまりません。 その“春苦味”に加わるのが、アスパラガスでもあるのです。

北海道の野菜は美味しいと一般的に思われていますが、いくつかある要因のひとつに、一年一作の北海道では、野菜は “ほとんどが旬にしか栽培できない” ということがあると思います。 旬の野菜の美味しさが格別な上に、アスパラガスにおいては、永年草であるために長い冬にしっかり休むことができ、寒さに耐えることで甘味や旨味を蓄えることができるなど、利点を生かし、特に美味しく育つのではないかと思っています。

新鮮なアスパラはより甘味を強く感じますが、ユリ科の植物独特の辛味やエグ味もあり、山菜のような苦味もあります。 生育した土の味、昨年の天候までも感じ取ることができる、実に面白い、懐の深い味の野菜なのです。

こんな春のアスパラを42年前から食べ続けている私ですが、今では農業技術の発達で秋まで収穫できるようになり、半年間は毎日アスパラを食べています。 「半年って大げさだよね?」と言われますが、いえいえ、毎日食べていますし、全く飽きません。

そうなのです。お客様の誰よりも、内山家の人間がアスパラ大好きなのです。これから来る春、子どもたちは「アスパラまだ?」と嬉しい質問を毎日のようにしてくれます。 新鮮で美味しいアスパラを知っているので、半年間我慢してきた分、これから半年間たっぷりとアスパラを堪能したいと思います。

( 絵 / Midori Kambara )

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